オフセット印刷とは？特徴やメリットを詳しく解説
印刷機には、家庭用のインクジェットプリンターからオフィスのコピー機、工業用の巨大な印刷機までさまざまなものがあります。
現在の商業印刷でよく使われている印刷方式が、「オフセット印刷」と「オンデマンド印刷（デジタル印刷）」です。
それぞれの特長を理解して最適な印刷方法を選択することは、色の再現性やコスト、納期に大きく影響してきます。
今回は「オフセット印刷」について、その方式や他の印刷方法との違い、メリット・デメリットを深堀りしていきます。
オフセット印刷とは？
オフセット印刷とは、印刷をする際に「版」を使用する印刷方式のことを指します。
オフセット印刷の原理
オフセット印刷の原理としては、版の図柄や文字を直接紙に転写するのではなく、刷版にインキをつけ、版についたインキをブランケットと呼ばれるゴム胴へ転写(オフ)してから紙に印刷(セット)します。
インキが紙にしっかりと圧着し、写真や文字など細部まで鮮明に表現できるので、安定した品質での印刷が可能となっています。
名前の由来も印刷方式の原理から名づけられたことが、お分かりいただけたでしょうか。
網点とは？
網点とは、一定の間隔で配置された小さな点の集まりのことを指します。
オフセット印刷で印刷された印刷物をルーペでよくみると、C(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)・K(ブラック)で印刷された小さな点が見えます。
印刷物はこの網点を、「線数(網点の細かさ)」「角度」「濃度」の要素で組み合わせて印刷することで、さまざまな色の濃淡や画像・写真のグラデーションを再現しています。
オフセット印刷機の種類
オフセット印刷機には、カットされた紙に印刷する枚葉印刷機と、ロール状の紙に連続して印刷する輪転印刷機の2種類があります。
枚葉印刷機
大判にカットされた用紙(板紙)に1枚づつ印刷を行うため、品質確保と汎用性に優れた印刷機です。
印刷機によっては、両面印刷や多色印刷できる機種もあります。
輪転印刷機
大きなトイレットペーパーのようなロール状の用紙(巻取紙)に高速で印刷を行い、印刷後にカットします。
新聞や雑誌、書籍などの大量印刷に用いられることが多い、短時間での大量生産に特化した印刷機です。
オフセット印刷と他の印刷方式の比較
オフセット印刷について概要を掴んだところで、その他の印刷方式との違いについても解説していきます。
オンデマンド印刷との違い
オンデマンド印刷は版を必要とせず、データを直接印刷機に送って印刷する方式です。
オンデマンドは「On-Demand(要求に応じて)」という言葉のとおり、必要なときに、必要な分だけを、1枚からでも要求に応じて印刷できます。
ただし、色ムラや小さな文字、罫線などの再現性についてはオフセット印刷と比べて多少劣ります。
一般家庭やオフィスで利用されている印刷機も基本的にオンデマンド印刷機です。
オンデマンド印刷の詳細は、こちらの記事で詳しく解説しています。
インクジェット印刷
よく耳にするインクジェット印刷は、上記に紹介したオンデマンド印刷の中の1種、と考えてください。
オンデマンド印刷には「レーザー方式」と「インクジェット方式」があり、後者は微細な粒子化したインキを紙に直接吹きつけて印刷する方式です。ご家庭で利用されているプリンターも、多くはインクジェット方式です。
インクジェット印刷もオンデマンド印刷と同様、1枚から印刷することが可能で、少部数の印刷物に適しています。一方、印刷速度は遅いため、大量に印刷したい場合は、オフセット印刷がおすすめです。
グラビア印刷
グラビア印刷は、雑誌の「グラビア」の由来にもなっている凹版印刷のひとつです。
オフセット印刷のように網点を使うのではなく、版の凹んだ部分にインキを流し込み、金属の版（ロール）が回転して用紙に押し当てることで印刷します。
濃淡の表現の幅が広いため、色鮮やかさが求められる写真画像の再現性に優れています。ただし、版の加工と手間にコストがかかるのが難点です。
フレキソ印刷
フレキソ印刷は凸版印刷のひとつです。
やわらかいゴムや樹脂でつくられた版にインキを付着させ、ドラムが回転して紙に転写させます。普段使うハンコをイメージしていただけると分かりやすいかと思います。
版自体に弾性があるので、段ボールや紙袋など表面が平らで滑らかでないものへの印刷に適しています。ただし網点が荒いため、オフセット印刷のように繊細な印刷には不向きです。
オフセット印刷のメリット・デメリット
メリット
①短時間での大ロット印刷に最適
印刷スピードが速く、生産性が高い点はオフセット印刷のメリットです。
輪転印刷機であれば、さらに短時間で大量の印刷物が作成できます。
②部数が増えるとコストを抑えられる
オフセット印刷は、版の作成に初回費用が掛かりますが、版の費用は固定なので印刷部数が増えるほどコストダウンにつながるメリットがあります。
③印刷できる紙の種類・サイズが豊富
オフセット印刷機の枚葉印刷機においては、薄紙から厚紙、エンボスなどの凹凸のある紙や特殊紙など、さまざまな種類の印刷用紙に対応が可能です。
また、A0～B1判などの大きなサイズの紙にも印刷することが可能です。
④色の再現性が高く微細な表現が可能
高い技術により、高精度・高品質の色再現が可能です。
また、通常のCMYK4色にプラスして特色インキ(金や銀など)も使用することで多色印刷が実現できます。
デメリット
①ロットが少ないと割高になる
オフセット印刷の場合、どうしても版の費用がかかります。
印刷部数が少ない場合は版のコストの割合が高くなるため、1部あたりの単価も高くなりがちです。
②納期が必要
デジタルデータから直接印刷するオンデマンド印刷と比較して、版をつくるを製版工程が必要なので、その分納期が長くなります。
③少部数・多品種の印刷には不向き
オンデマンド印刷のメリットでご紹介した「バリアブル印刷」のように、さまざまな種類の印刷物を少しずつ印刷しようとする場合、オフセット印刷では種類ごとに版をつくらなくてはならないので、版のコストがかさみ、割高になってしまいます。
すこしずつ、種類を多くして印刷物をつくりたい場合は、オンデマンド印刷がおすすめです。
まとめ
現在の印刷業界で主流になっているオフセット印刷について紹介してきました。
色の再現性が高く、大量印刷が可能なオフセット印刷ですが、昨今ではペーパーレスやデジタル化の流れを受け、多品種・小ロット印刷が可能なオンデマンド印刷(デジタル印刷)へのシフトが注目されています。
YPGでは、オンデマンド印刷・オフセット印刷のどちらも設備が整っており、お客様の目的やご予算に応じて最適な印刷方式でご提案させていただきます。ぜひお気軽にお問合せください。