UV印刷のメリット・デメリット~油性インキを用いたオフセット印刷と比較~
「UV」とは、英語の (ultra-violet)の略で、皆さんがよく耳にする紫外線のことですが、印刷の分野でも「UV印刷」として効果的に利用されていることをご存じでしょうか。
「UV印刷」とは紫外線を光で照射することで、瞬間的に硬化乾燥する「UVインキ」を使った印刷手法のことをいいます。
「オフセット印刷」は、版胴につけたインキをブランケット胴に転写(オフ)し、さらに用紙に転移(セット)して印刷する手法で、版に凹凸のない平らな板を使用するため平版印刷とも呼ばれます。通常は油性インキを使用しますが、「UV印刷」ではUVインキを使用します。
つまり「UV印刷」は、「UVインキ」を使った「オフセット印刷」です。
その他にも印刷手法としては、デジタル印刷(オンデマンド印刷)、グラビア印刷、フレキソ印刷など印刷する素材(原反)に合わせた印刷手法が存在しますが、ユーザー様にとって成果物に対する印刷手法はそれほど関心になることは少ないかもしれませんね。
今回は、UV印刷:UVインキのメリット・デメリットについて、通常のオフセット印刷:油性インキと比較しながら解説していきます。
UV印刷のメリット
メリット1.速乾性があり、短納期に対応
UV印刷(硬化型)は印刷時にインキが瞬間的に硬化乾燥するので、次工程への待ち時間が不要になるため、工程を短縮することができます。
一方、通常のオフセット印刷(酸化重合型)は、インキを乾燥させるため、次工程まで半日以上の時間が必要です。
短納期に対応するならば、UV印刷にメリットがありそうですね。
メリット2.ノンパウダーで品質安定
油性インキを使用するオフセット印刷では、印刷用紙の裏移りや紙同士の付着を防ぐために印刷用パウダー(工業用澱粉)が使用されています。
印刷物に触れたとき、表面がザラザラとした手触りだと感じることはありませんか?これは、パウダーが残っているためです。また油性インキは、インキが乾くにしたがって徐々に色が変化していく「ドライダウン」が発生するため、印刷直後と仕上がりで色味が変わることもありました。
UV印刷では、UVインキを瞬間的に硬化乾燥させるのでパウダーを必要とせず、紙の付着もありません。印刷用パウダーが不要なので表面に粒子が残らないため、印刷後の表面加工にも利点があります。色調についても、ドライダウンにより、色が変化することはありません。そのため色の再現性が高く、品質も安定し、印刷物がキレイに仕上がります。
メリット3.インキ被膜が強く、耐摩耗性・耐久性に優れている
UVインキはアクリル樹脂を主成分として製造されているため、硬化した表面は樹脂被膜となります。
そのため油性インキに比べて耐摩擦性が高く、キズがつきにくいのが特長です。
メリット4.人体・環境にやさしい
一般的な印刷に使用する油性インキには溶剤が含まれています。
油性インキには、光化学スモッグの原因となるVOC(揮発性有機化合物)や石油系溶剤を使用しており、印刷インキを身近に取り扱う現場の作業員のことを考えると、人体に影響の少ない資材への切り替えは重要です。
加えて、印刷工程で発生するVOCの揮発・排気による大気汚染も深刻な問題です。
その点、UVインキは構成物の中にVOCや石油系溶剤を含まず、油性インキと比較しても臭気がほとんどない人と環境にやさしいインキと言えます。
UV印刷のデメリット
デメリット1.コストがかかる
UV印刷はUVインキを硬化させるために「UVランプ」を使用して照射します。UVランプは一定期間の使用で交換が必要になりますが、オフセット印刷では必要ありません。
また、UVインキにはインキを硬化させるための反応開始剤が含まれるため、油性インキに比べ、価格は約2倍以上と高価です。
ランプの照射電力や付帯設備など、通常のオフセット印刷ではかからない材料代・維持費を考慮すると、印刷コストとしてはデメリットの方が多いと言えます。
デメリット2.光沢の再現性に劣る
UVインキは油性インキに比べて、仕上り時の光沢にやや劣る傾向にあります。
その理由はUVインキの硬化速度が速いため、インキが馴染んで平滑になる前に硬化してしまうためです。インキの被膜に平滑性がないことでインキ粒が立ってしまい、光が乱反射して光沢が得にくくなります。
デメリット3.スミ(黒)インキが薄くなりがち
スミ(黒)インキに含まれるカーボンがUVランプの紫外線をほとんど吸収してしまい、触媒である反応開始剤に十分に届かないため黒色が薄く見えてしまうことがあります。
M(マゼンタ)・Y(イエロー)は紫外線を比較的吸収しにくく、C(シアン)・K(スミ)、特にスミは紫外線をほとんど吸収してしまいます。
スミを濃くしようと濃度を上げると硬化が不十分になり、裏移りや付着の原因になってしまいます。
デメリット4.背割れを起こしやすい
メリット3で紹介したように「インキ被膜が強く、耐摩耗性・耐久性に優れている」反面、折ったり、曲げたりすると背の部分に「割れ」が生じやすくなるのも事実です。
そのため、デザイン段階での調整や筋入れなどの対策が必要になってきます。
一方、油性インキは用紙にインキが染み込む為、「割れ」が目立つことは少ないと言えます。
まとめ
UV印刷:UVインキとオフセット印刷:油性インキのメリット・デメリットを解説してきましたが、UV印刷とオフセット印刷ともに一長一短があることがお分かりいただけたと思います。
しかし、紙以外のPP、PET、塩ビや各種化成品(フィルム)などにも印刷ができる点でUV印刷は、まだまだ活路が広がる可能性を秘めています。
YPGがUV印刷に取り組むワケ
YPGでは今から30年以上前の1992年から業界でいち早く「水なし印刷」を導入し、有害な廃液を出さない印刷方式を採用しています。
2002年には地球環境保全団体である(一財)日本WPA(水なし印刷協会)に加盟し、環境保全に積極的に取り組み、クオリティの高い印刷物を製造する印刷会社の証として水なし印刷認証マーク(通称:バタフライマーク)の使用が認められています。
その後も環境に配慮した印刷工場としての取り組みを進めるなかで、UV印刷を導入するのは自然な流れだったのかもしれません。
YPGは、UV印刷手法の中でも、さらに環境に配慮した「Eco-UV印刷方式」を導入しています。
「Eco-UV印刷」とは通常のUV印刷より少ない紫外線照射で専用インキを速乾させる、省電力と生産効率の良さが魅力の省エネ型の印刷方式です。
また廃液を出さない「水なし印刷」に取り組んできた当グループは、インキメーカーと共同で高感度の専用「Non-VOCインキ」の開発に挑戦。試行錯誤を重ね、2012年日本初の「水なしEco-UV印刷」の実用化にこぎつけました。
現在では、金沢・江東潮見(東京)の両工場で「水なしEco-UV印刷」の導入を完了、GP認証やFSC認証も取得し、現在進行形で環境に配慮した生産工場としての取り組みを進めています。