「環境に優しい印刷」とは?実現する方法やメリットを解説
近年SDGsが注目される中で、サステナブルな社会の実現に向けて地球環境や地域社会に配慮した製品・サービスを優先して購入する「エシカル消費」が注目されています。環境に配慮した製品開発や、省エネルギー化などの取り組みを進めている企業様も多いのではないでしょうか?
環境に優しい製品・取り組みをPRする際には、製品カタログやパッケージ、会社案内も「環境に優しい印刷」で作成することで、企業として一貫した姿勢を示すことができるのでおすすめです。
この記事では、
●エコな印刷を実現する、具体的な原料や印刷方法
●環境に優しい印刷を採用するメリット
を、解説します。
どうやって実現する?環境に優しいエコ印刷
環境に優しいエコな印刷を実現するには、印刷物を構成する「原料」・印刷物を製造する「工場」の両方とも、環境に配慮した選択をする必要があります。
エコな原料を使う
印刷物は「紙」と「インキ」からできています。
環境に優しい印刷物を実現するためには、まず、このふたつを環境に配慮した原料にすることが大切です。
環境に配慮した工場に依頼する
原料だけでなく、印刷物を製造する機械や工場自体も、環境に配慮していることが大切です。原料を仕入れ、紙を印刷・製本、梱包して配送するまでの間で、人や環境に優しい方法を選択できる場面が多くあります。
エコな印刷の原料について知る
紙
ご存知の通り、紙は主に木材から作られていますが、過剰に森林が伐採されることで森林破壊・地球温暖化につながってしまうため、紙の原料についても配慮が必要です。適切に管理・伐採された木材を使用した紙や、木材以外の資源を有効活用して生産された紙が「エコな紙」として注目を集めています。
FSC認証紙
「FSC認証」は、適切に管理された森林から生産された林産物や、その他のリスクの低い林産物を使用した製品を目に見える形で消費者に届ける仕組みです。森林から印刷までの全工程の認証をクリアした製品にはロゴマークが付与されます。日常生活でも、お菓子のパッケージやノートなどで目にする機会が多いマークです。認証製品を選ぶことで、消費者は適切な管理の上で利用される森林を支援し、森林保全に貢献できます。
ストーンペーパー
ストーンペーパーとは、原料に木材などを一切使用せず、石を原料として作られた紙です。貴重な森林を伐採せずに作られるため、森林資源の保護やCO2削減に貢献できます。水に強く破れにくい特長を持っているので、屋外に掲示するポスターや防災マップなどにもぴったりです。
インキ
従来の印刷インキは石油系溶剤を使用しており、人体や環境に有害なガスを排出してしまいます。この石油系溶剤を原料として使用しない「エコなインキ」をご紹介します。
ノンVOCインキ
揮発性有機化合物のことをVOC(Volatile Organic Compounds)と呼びます。揮発することで光化学スモッグが発生し、健康被害や大気汚染につながってしまうVOCを、大豆油や米ぬか油などの植物油で代替することで、人と環境に優しいインキを実現しています。当社では、インキメーカーと共同で、汚水を排出しない「水なし印刷」に対応したノンVOCインキを開発し、使用しています。
ベジタブルインキ
ベジタブルインキとは、亜麻仁油・桐油・ヤシ油・パーム油など植物由来の油や、それを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油が使われた印刷用インキです。植物油は石油系の溶剤に比べて生分解性があるので、環境負荷を軽減することができます。ベジタブルオイルインクは印刷インキ工業連合会により定義されており、印刷物にこのインキを使う場合は植物油インキマークを使うことができます。
バイオマスインキ
バイオマスインキは、綿、パルプ、米ぬか、植物油、被子植物の種などの生物由来の資源(バイオマス)から作られたインキです。バイオマス成分の含有率10%以上がバイオマスインキとして認定されます。一般社団法人日本有機資源協会が、バイオマスの含有量、環境製品としての安全・安心性を審査してバイオマスマークの認定を行ってます。
エコな印刷工場について知る
印刷方法
従来の印刷方法は「水あり印刷」といって、消費電力が大きい、汚水を排出するなどの環境問題と隣り合わせでした。消費電力の少ない印刷機や汚水の出ない印刷方式を採用したり、印刷部数を見直すことなどにより、CO2削減や廃棄レスにつながる「エコな印刷方法」を実現することができます。
水なし印刷
従来の「水あり印刷」では、油性のインキと反発する性質を持つ水を使用して転写をしていましたが、この水には有害物質が含まれてしまい、大量の汚水を排出していました。「水なし印刷」は水を使わず汚水を排出しない、水質保護につながる印刷方式です。次項の「水なしカーボンオフセット印刷」により、環境への貢献度を一層高めることができます。
水なしカーボンオフセット印刷
前項の「水なし印刷」も環境に優しい印刷方式ですが、機械の稼働や紙・インキ、納品時の運搬など、製造工程でどうしても排出されてしまうCO2が発生します。このCO2をクレジット購入して相殺(オフセット)できるのが、「水なしカーボンオフセット印刷」です。購入資金はCO2を削減する活動に寄付され、製造工程でのCO2の排出を実質ゼロにすることができます。印刷した製品には、1部あたり何グラムのCO2を削減したかを明記することができます。
エコUV印刷
UV印刷は、インキを複数のUVライトで瞬時に硬化させる印刷方式です。「エコUV印刷」はUVライトへの感度が高いUVインキを用いることで、ランプ1灯だけでインキを硬化をさせ、消費電力を1/3に削減することができます。さらに紫外線の短い波長をカットすることで、従来のUV印刷で発生していたオゾンも抑制しています。
デジタル印刷(オンデマンド印刷)
ここまでご紹介した印刷方式は「オフセット印刷」という、印刷用のハンコ(刷版)を必要とする印刷方式でしたが、刷版が不要な「デジタル印刷(オンデマンド印刷)」という方法もあります。必要な部数を、必要なタイミングで印刷することができるため、不良在庫の廃棄を減らし、紙資源を保護することにもつながります。
工場認定
最後に、「エコな工場」に与えられる認定を2種類ご紹介します。
グリーンプリンティング認定工場
「グリーンプリンティング認定」は、印刷製品だけでなく、資材や関連する工程、事業者の取り組みなど、総合的に環境に配慮した印刷工場を認定するものです。第三者からなる認定委員会によって認定を受けることで、「GPマーク」を使用することができます。印刷製品に「GPマーク」を表示することで、資材、製造工程、印刷会社の取り組みの全てが、環境に配慮されていることが一目瞭然になります。
FSC/CoC認定工場
「エコな紙」としてご紹介したFSC認証紙ですが、「FSCマーク」は製品になるまでの全工程の認証をクリアした製品付与されるマークです。印刷物の製造においては、具体的に、適切に管理された森林から切り出した木材をパルプに加工し、紙をつくり、印刷をして製本するすべての工程に関わる組織が認証を受けなくてはなりません。FSC認証の審査・発行は第三者の認証機関が実施します。消費者はFSCマークを目印に製品を選ぶことで、森林とそれに関わる動植物・先住民族・労働者の保護に貢献できます。
環境に優しい印刷を選ぶメリット
ここまで環境に優しい印刷について、さまざまな原料と方式をご紹介してきました。当然ながら、原料を変更したり印刷方法を見直すことでコストアップになる場合もありますが、変更することによって得られるメリットも存在します。メリット①企業として社会貢献できる
環境に優しいエコな印刷に取り組むメリットとして、企業として社会貢献できる点が挙げられます。持続可能な社会の実現に向けて、脱プラ・脱炭素の取り組みが世界的に盛り上がっている今、企業の参画は不可欠です。
例えば、インテリアや住宅など林業に関わる企業様であれば、適切に管理された森林の木材を使用したFSC認証紙、水産業に関わる企業様であれば水質保全に貢献する水なし印刷など、自社の活動に関連が深い印刷を選択してはいかがでしょうか?
メリット②消費者の環境意識の高まりに対応
小学生からSDGsを学習する現在、環境配慮や社会貢献は製品選びのポイントになってきており、今後ますます「当たり前」のこととして広がっていくのではないでしょうか?製品カタログやパッケージ、会社案内などに今までご紹介した環境ラベルを表示することで、時代に即した取り組みを行っている企業であると、消費者に向けてPRすることにもつながります。
さいごに
ひと口に「環境に優しい印刷」と言っても、原料から印刷方法まで、さまざまなアプローチで対応することが可能です。自社の社会貢献活動につながる印刷方式や、消費行動に働きかける環境ラベルなど、実現したい内容・PRしたい製品に合わせて選択すると効果的です。
YPGでは、印刷物の価値を大切にしながら環境対応を進めるため、FSC認証とグリーンプリンティング認定を取得、2012年には水なし印刷とエコUV印刷を両立した、日本初の「水なしEco-UV印刷」を実現。2023年3月からは「水なしカーボンオフセット印刷」への対応を開始するなど、独自の環境印刷システムを確立してまいりました。
環境に優しい製品・取り組みのPRをお考えでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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